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『幽霊デビュー』最終回です。
夏のネタとしては、何とか8月中に終われてほっと一息。

>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡


「もともと年下のオレの方が有利です」
真田さんはオレより常に1年分、長生きして、ようやく同着ですからね。
学年差でいえば2年分ですが、そこはおまけしときましょう。

深刻な雰囲気になりすぎないよう、少し冗談めかして付け加える。真田ものってきた。
「ハンデつきか」
「得意でしょう、『先輩』。定年まで勝負つかなかったら、ルールの改定を考えます」
「先の長い話だな」
「あっという間ですよ。自信ありませんか?」
「いや、受けてたとう」
真田の答えにほころびかけていた顔を引き締める。
「ほな、勝負開始ですね。よろしゅうお願いします」
嶋本はピンと背筋を伸ばして敬礼し、それから思い直して潜水士の礼をした。
「嶋本と、こんなに礼儀正しい勝負は初めてだな」
同じように礼を返しながら、真田が呟く。
「一生もんの勝負ですから」
学生時代のように、勢いにまかせて勝負に突撃するわけにはいかない。
それに今回の勝負は、たやすく勝つつもりも負けるつもりもないのだから。
「―――まるでプロポーズだ」
真顔で言われ、嶋本は一瞬言葉を失った。
「プ、プロポーズて!」
「一生続く約束だ」
「いや、そらそうですけど…」
あんまりな表現に地面にのめり込みたい気分の嶋本だったが、真田が本当に楽しそうに笑っていたので、喉元まで来ていた抗議は引っ込める。
真田の笑いが収まった頃を見計らって、声をかけた。
「今日はごちそうさまでした」
「いや、オレの方こそ楽しませてもらった」
まだ笑いの余韻が残る目元で言われ、嶋本の眉間に皺がよる。
嶋本の表情を見てとった真田が、ふと手を伸ばした。
「よく休んでくれ」
くしゃりと髪をかき回してから離れる手を見送りながら、嶋本も言った。
「…真田さんもお休みなさい」
真田が踵を返すのを見てから、嶋本も身を返した。
トッキューにたどり着くという約束を果たして、新たに挑む長い勝負の始まりを思いながら、嶋本は官舎の階段を駆けあがった。

 
>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡



初回が7月22日だったので、一ヶ月ほど書いてたのか…こんなに続くとは思ってなかった。うっかり『守護霊デビュー』までしてしまったし(苦笑)
そういえば正式タイトルに悩んでいたのですが、なんとも思いつかず。もう『幽霊デビュー』のままでいいか…
 
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夏の終わりと競争中。もともと夏だから、と思って考えたネタだったし。
蛇足かも、と思ったけど。一応『幽霊デビュー』 おまけ話その2です。
 

>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡
 
4ヶ月の研修期間が終わり、トッキューに正式配属された嶋本は、真田に祝いと称して飲みに誘われた。
真田が奢る、と言って嶋本を連れて行ったのは、普段よく行く安さと量がメインの店ではなく、高級とまでは言わなくとも落ち着いた雰囲気の料亭だった。
恐縮しながら品のよい女将に案内された座敷で、結局レスキューの話ばかりをした。
ほろ酔い気分で外に出ると、冬の夜風が身にしみる。
「寒いか?」
「いえ」
酔いざましにちょうどいい。
それに。酒は入っているが酔っ払ってはいない、こんな時でないと言えない気がする。
トッキューに行くという約束を己に課して、訓練を積みながら思ったこと。
あれ以来、姿も気配も見えないが。彼方の岸にいる人に、いつか胸を張って会える自分であるために。

官舎の前まで来て、別れ際に嶋本は真田の前で姿勢を正して立った。
「トッキューに来たら真田さんと勝負しようと思てたことがあるんです」
「なんだ」
「あなたより先に死にません」
さすがの真田が虚をつかれたようだった。
「…それは今必要な勝負か?」
「ええ、一生かかりますから」
「…」
一生、に込めた力に気付いたらしい真田が黙る。将来に明確なビジョンを持たないまま、がむしゃらに目の前の障壁を突破してきた――そういう顔だった。

>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡



次で終わりです~
…強行軍の置き土産で、眠い…けど、もうひとふんばり。
『幽霊デビュー』おまけです。会話多いですが(苦笑)


>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡

入隊式前夜。思いがけず真田と出会った。
「来たか」
「ええ、来ました」
嶋本をじっと見下ろした真田は、ついと手を伸ばした。
「今日はさわれるのか」
髪をかき混ぜる真田の目は、あの時見た通りに片二重だった。
「夢とは思わんかったんですか?」
「最初はな。だが、何か事故があった可能性も考えた」
「…それは、いらん心配をおかけしました」
結局伊藤は、真田の前には姿を見せなかったのだろうか。
「さすがにあれが最初で最後なんで」
「そうしてくれ。心臓に悪い」
「どの口が言いますか、そんなセリフ」
「そうか?」
「何や噂だけはいろいろ聞いてますよ」
「信じるのか?」
「確かめます―――これから」
告げたい言葉はある。が、かたや現役のトッキュー隊員、引き替え嶋本はこれから新人研修を受ける身だ。彼我の力の差はわかっている。
今はまだ言えないその言葉を胸に、嶋本は一礼して真田の前を去った。


>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡
 
 

おまけ話、もう一つは明日以降に。
…ありまして。
横/浜/海/上/防/災/基/地を見てきました!
そもそもの原因は
1.芹は方向音痴である
2.芹はかくれオタクである の二つ。

以下、経過をかいつまんで。長いので、折りたたみます~
『幽霊デビュー』おまけ編は、明日以降に…
『幽霊デビュー』もあとちょっと。夏の終わりと競争ですな(苦笑)
うっかり幽体離脱から、帰ってきたぞ~…の続きです。


>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡

五十嵐の顔を見ながら、暗闇に意識を飲まれる直前、反射的に見たダイバーズウオッチの数字を思い出す。だが改めて今、ちらりと目を落としたそれは、秒数以外の表示を変えていなかった。
…それでも、不自然な間を作っただろうことは確実だ。
「す、すみません」
五十嵐に詫びて頭を下げると、カウンターにぽとりと滴が落ちた。
「あれ?」
自分の頬に触れて、それが己れの涙と知る。
「――シマはいい子ね」
「え?」
この年でいい子はないと抗議しようとして、嶋本は口を閉じた。
「私の方がもらい泣き」
目から一筋涙を流しながら、ひっそりと笑う五十嵐に、懸命に笑い返した。
「ホンマや」
涙をこらえる努力を放棄して、笑いながら二人して涙を流す。
「いっそ朝まで泣き明かしましょか」
「いいわね」
グラスを傾けながら、嶋本は先程の体験について考える。
さっきまであった伊藤の気配がない。暗闇の中、聞こえた声を思い出す。

「――甚!」

あれは伊藤の声だ。
五十嵐のした真田の話題に触発されたのか。
(婚約者より親友の心配かよ)
事故時の状況を思うと無理もないが、伊藤らしいことだと思う。それに引きずられて、もしかすると噂に聞く「幽体離脱」までやってしまった自分も大概だが。
伊藤は嶋本を「明るい」と言った。伊藤を阻んだ真田を取り巻く闇を自分が払えたのなら、嬉しいと思う。
何より思い残しの種だった真田の様子を、今度こそしっかり確認するといい。

その後、まさか本当に泣き明かしも飲み明かしも出来ず、嶋本は五十嵐を乗せたタクシーを見送った。
赤いテールランプの残像が消えると、嶋本は夜道を歩きだした。
真田の声を思い出す。
(なら、トッキューで)
あれが夢でも幻でも、嶋本にとっては確かな約束だった。
今はただの新米潜水士だが。
(必ず辿りついてみせる)
潜水士の頂点に。そこに先に行く真田に。
魂は一日で千里をゆくと言うが、嶋本には一歩一歩歩いていくしか、前に進む術はない。
今踏み出す一歩が羽田にたどり着く一歩になると信じて、嶋本は歩き続けた。



>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡

あとはおまけの後日談でおしまい!…の予定です。

メルフォお返事は下のリンクから。
一手間おかけしてすみません。
ホントはここまで一続き…長すぎるかと分割したけど、自分で切っておいて気持ち悪かった。というか、おさまりが悪かった(苦笑)
とりあえず、一区切り~


 
>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡


「すんません。言い過ぎました」
腰を直角に曲げて詫びる。
「いや、嶋本が正しい。ありがとう」
「いえ、具合悪いところに、無神経なことを言いました」
「いや…腫れ物に触るか、真綿でくるまれるかのどちらかだったから。本当にありがたい」
真田の声音の静けさに、嶋本は顔を上げた。
しばらく黙って嶋本を見つめていた真田は、やがてぽつりと呟いた。
「…嶋本は明るいな。灯台のようだ」
言われてみれば、消灯後の病室の光源は嶋本自身だった。やっぱり夢かな、と思いながら嶋本は小さく笑う。
「それ、伊藤先輩にも言われました」
「そうか」
嶋本は真田の肩から離した手を、右目にそっと伸ばした。指で目蓋をなぞる。
「伊藤先輩の目や」
「ああ」
「一緒におるんやな」
「…ああ」
「やったら、あんまり心配かけたらあきませんよ」
「そうだな」
穏やかに答える真田の輪郭がぼやけはじめた。
真田の目にはどう映ったのか、名を呼びながら嶋本の腕を掴もうとした真田の指が素通りする。
「時間切れみたいですね。今度は夢やないところで会いましょう。約束です」
「なら、トッキューで」
即座に返された言葉に、嶋本は目を見開いた。その約束を知っている。
「一足先に行く」
ベッド脇に立つ嶋本を見上げてくる目は、最初のただ絶望に満ちたものではなく、どん底から這い上がろうとする意思が見える。
「追いつきます、必ず。で、追い越します」
言い切った嶋本に向けられた真田の微苦笑がにじむ。
―――そして嶋本は、五十嵐の前にいた。


>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡
 
 

ただいま~(笑)
「うっかり幽体離脱編」(妙なサブタイトルつけちゃった…)の続きです。
今回、会話ばっかり…(苦笑)


>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡

「レスキュー続けるてホンマですか」
「ああ」
「なんで。罪滅ぼしですか」
「…償うことなど出来ない。有を殺したのはオレだ」
「事故やないんですか」
「オレのミスだ。己れの力量を見誤り、パニックに陥ってバディを死なせた」
「バディというならフィフティフィフティでしょう。二人のミスで、二人の責任や。全部が自分のせいなんて、思いあがりや」
「…でも生き残ったのはオレだ。オレだけが」
暗い気配が真田の周りを取り巻き始める。
嶋本は真田に近づくと、その肩を掴んだ。
「悲しむことと責任は違うもんです。それとも罪悪感からレスキュー続けるなんてゆわはったんですか? やったら迷惑や」
「―――迷惑」
「レスキュー続けて、トッキュー行くんやろ?おれかて行くのに、後悔と罪悪感で真っ暗なやつがおったら、助かるもんも助からん」
「そうか…嶋本は潜水士になったのだったな」
「そうや。別に昔、先輩に言われたからやない。自分で決めた。
…オレかてガキの頃、バカやって他人の人生いっぱいねじ曲げたけど、レスキューやって償えるなんて思てへん。起こってしもうたことは、後から何をやっても取り返されへん。
せやから、後悔するんなら次に進む為にせんと意味がない。後ろ向くだけの後悔なんか、ただの自己憐憫や」
一気に言い切ってから、しまったと思った。
真田の顔色がやけに白い。


>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡


嶋本が潜水士になった時期を迷ったのですが(これから潜水研修を受ける、とか)、とりあえずこれで…
続きはまた明日に。
『幽霊デビュー』の続きです。
「うっかり幽体離脱編」は、ホントうっかり長くなってしまったので、テキストを分割しました。妙なところで切れてますが、続きはまた明日に…



>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡

暗い。暗い。
何だよ、これ。
上下左右もわからない。どちらを向いても、夜の海よりなお暗い、真っ暗な闇。時間の感覚もおぼつかないその中で、たった一言耳をかすめた音がある。
それを信じて、嶋本は叫んだ。
「真田! おるんやろ! 出て来い…!」
視界がスパークする。
次の瞬間、嶋本は包帯と病衣に身を包んだ真田の前に立っていた。
「…嶋本?」
「真田…先輩」
命に別状はないと聞いていた通り、包帯は巻いているが、回復不可能な損傷はないようだった。とりあえず肉体的には。
だが白い病室の中で、真田を取り巻く空気がひどく淀んでいる。
(…こんなん初めてや)
真田の周りはいつも本人同様、清冽過ぎて何も寄せ付けなかったのに。
「5管から来たのか? 面会時間はとうに過ぎているが」
「…おかしいて思いませんか? オレ、今入り口から入らんかったやろ」
「…そうだな」
「だからこれは夢や」
「…なるほど」
ベッド上に起き上がった真田は嶋本の意見をあっさり取り入れ、目をすがめて嶋本を見た。
「お前の夢を見て、オレはどうしたいんだろうな」
自嘲するような声に、嶋本は真田を見据えた。
これが夢か現実かわからないが。もし本当なら確かめたいことがある。

>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡>゜)))彡
 

もともと夏だから…と思って考えたネタなのに、夏中に終わるのかしら…(苦笑)
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